この記事でわかること
- 住んでいなくても出ていく維持費の内訳。雪と離島で何が違うか
- 空き家が雪で倒壊して被害が出たとき、誰が責任を負うか
- 解体費に輸送費と工期の制約が乗る仕組み
- 相続土地国庫帰属制度を使う場合と、売る場合の比べ方
親が亡くなって、生まれ故郷の家を相続した。自分は都市部に住んでいて、戻る予定はない。冬になると雪下ろしの連絡が来る。島の家なら、見に行くだけで一日かかる。
「売れないなら、いっそ国に引き取ってもらえないか」というご相談もよくいただきます。その道も含めて整理します。
先に結論
建物が建っている土地は、相続土地国庫帰属制度では引き取ってもらえません。建物の存する土地は、申請が却下される要件に挙げられています。国に渡すには、先に自分の費用で解体することになります。
そして豪雪地帯と離島では、解体費に通常とは違う要素が乗ります。離島は廃棄物の輸送費、豪雪地帯は工事ができる季節の制約です。だから「解体してから国へ」という道は、思っているより重いことが多いです。建物付きのまま売る道と、金額を並べて比べてください。
買主が少ないのは、土地が余っているから
全国に対する割合。市町村数は令和6年4月1日現在、人口は令和2年国勢調査。
出典:国土交通省国土政策局「豪雪地帯対策における施策の実施状況等(資料編)」(令和7年2月)より作成。豪雪地帯は532市町村、うち特別豪雪地帯は201市町村。
豪雪地帯は国土の半分を占めていて、人口は7分の1です。特別豪雪地帯になると、国土の5分の1に人口の2%しか住んでいません。
これが、売りにくさの正体です。土地が足りない場所ではないので、わざわざ買う理由が生まれにくい。建物の古さや訳ありの事情以前に、この構造があります。だから「もっと高く売れるはずだ」という前提で待っていると、維持費だけが出ていきます。
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住んでいなくても出ていくお金
- 雪下ろし・除雪屋根の形と面積、積雪量、業者の手配のしやすさで変わります。冬のあいだに複数回必要になることもあります
- 冬季の見回りと凍結対策水抜き、通水、郵便物の確認。遠方だと誰かに頼むことになります
- 離島の渡航費本人が行く場合も、業者に来てもらう場合も乗ります
- 固定資産税建物が建っていると住宅用地の特例で土地の税額が抑えられています。この特例が外れると上がります
- 火災保険空き家は住宅用の契約が続けられず、条件が変わることがあります
- 庭木・草雪で折れた枝が隣地や道路に落ちると、片付けが必要になります
一つひとつは大きくなくても、これが毎年、何も生まないまま出ていきます。売れるまで待つという判断をするときは、待つ年数に維持費を掛けた金額と、価格の差を比べてください。
空き家を、手を入れないまま冬に入れないでください
雪の重みで屋根や建物が倒れ、隣の家や通行人に被害が出た場合、責任を負うのは所有者です。
民法717条は、土地の工作物の設置または保存に瑕疵があって他人に損害を生じたとき、まず占有者が賠償責任を負い、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者が賠償しなければならないと定めています。空き家の場合、占有者も所有者も同じ人です。そして所有者の責任は、注意していたかどうかにかかわらず問われます。
「遠くに住んでいて見に行けなかった」は理由になりません。倒れそうな状態を知りながら冬を越すことが、最も危ない判断です。売る算段が付いていなくても、危ない部分の手当てだけは先にしてください。
放っておくと、税金が上がります
2023年12月に施行された改正で、空家等対策の推進に関する特別措置法に管理不全空家等という区分が加わりました。
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管理不全空家等
そのまま放置すれば特定空家等になるおそれのある状態です。市町村から指導を受け、改善されない場合は勧告されます。
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勧告を受けると、住宅用地の特例が外れる
改正前は特定空家等への勧告だけが対象でしたが、改正後は管理不全空家等への勧告でも、固定資産税の住宅用地特例が解除されます。土地の固定資産税は、一般的な住宅で3倍から4倍に増えるとされています。
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特定空家等
倒壊などの危険がある、衛生上有害、著しく景観を損なっているなどの状態です。指導・勧告のあと命令、それでも従わない場合は行政代執行による解体があり、その費用は所有者に請求されます。
つまり、放っておくことが一番高くつく道になりました。以前は「売れないから放っておく」が成り立ちましたが、いまはそうではありません。
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解体費に何が乗るのか
豪雪地帯と離島では、通常の解体費に加えて次のものが乗ります。
| 豪雪地帯 | 離島 | |
|---|---|---|
| 工期 | 積雪期は工事ができない期間がある。工事できる季節に需要が集中する | 天候による船便の欠航が工期に直結する |
| 廃棄物 | 処分場までの距離 | 本土の処分場まで船で運ぶ。輸送費と船の手配が加わる |
| 重機 | 搬入路の除雪が必要になることがある | 重機自体を船で運ぶ場合がある |
| 作業員 | 地域の業者が限られる | 島外から入る場合、宿泊費と渡航費が乗る |
| 建物の傾向 | 積雪に耐える構造で、材が太く量が多い | 塩害で金物が傷んでいることがある |
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「坪いくら」として出回っている解体費は、本土の市街地で、通年工事ができる前提の金額です。豪雪地帯や離島にそのまま当てはめると、現実と合いません。相場をお伝えできないのは、この要素の幅が大きすぎるためです。
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相続土地国庫帰属制度と、売ることの比較
相続または遺贈で土地を取得した人が、国にその土地を引き取ってもらえる制度です。2023年(令和5年)4月27日から始まりました。手放す道として現実的な選択肢ですが、要件が細かいです。
| 相続土地国庫帰属制度 | 当社が買い取る | |
|---|---|---|
| 建物があるとき | 申請は却下されます。先に解体が必要 | 建物付きのままご相談いただけます |
| 境界 | 境界が明らかでない土地は却下されます | 未確定でもご相談いただけます |
| 担保権 | 設定されている土地は却下されます | 抹消の見通しを含めて検討します |
| 崖・工作物・樹木 | 管理に過分の費用や労力を要する場合は不承認になりえます | 状態を見て価格に反映します |
| お金の向き | 負担金を国に払います。宅地・田畑・その他は原則20万円、森林は面積に応じて算定 | 代金をお受け取りになります |
| 対象 | 相続または遺贈で取得した土地のみ | 取得の経緯は問いません |
| 共有地 | 共有者全員で申請する必要があります | 同じく全員の同意が必要です |
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比べるときの要点はひとつです。国庫帰属は「解体費+負担金を払って手放す」道、売却は「代金を受け取って手放す」道です。どちらが得かは、建物の解体費がいくらかかるかで決まります。
そして離島や豪雪地帯では、その解体費が読みにくい。だから順番としては、解体の見積りを取る前に、建物付きで売ったらいくらになるかを先に確かめるほうが安全です。
解体費をかけてから「売ったほうが良かった」となるのを防げます。遠方のままご相談いただけます。
ご相談の前に用意しておくと早いもの
- 固定資産税の納税通知書地番と評価額が分かります。これだけでも始められます
- 登記事項証明書法務局でオンライン請求もできます。現地に行く必要はありません
- 建物の外観が分かる写真ご親族やご近所に撮ってもらったもので構いません。古い写真でも参考になります
- 雪下ろしや除雪を頼んでいる業者名と、年間の費用維持費がいくら出ているかが分かると、判断の材料になります
- すでに解体の見積りを取っているなら、その書面輸送費が含まれているかを確認します
- 国庫帰属の相談を法務局でしている場合は、その内容
当社が確認していること
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建物の構造と、雪に対する状態
屋根の形(落雪式か無落雪か)、梁の太さ、過去の雪害の痕跡。傾きや軸のずれがあるかを見ます。
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搬入路と、重機が入れるか
冬季に除雪される道路かどうかも含めて確認します。これで解体の条件が変わります。
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離島の場合、廃棄物の処理の経路
島内に処分場があるのか、本土まで運ぶのか。船の便と、積載の制約を確認します。
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隣家との距離と、落雪の向き
隣に被害を出しうる位置関係かどうか。買主から見たときの不安材料になります。
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土地そのものの使い道
接道、用途地域、農地かどうか。更地にしたあと何に使えるのかで、価格の前提が変わります。
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市町村からの通知が来ていないか
管理不全空家等や特定空家等について、指導や勧告の通知があるかを確認します。あれば扱いが変わります。
よくあるご質問
- 放っておくと固定資産税が上がるというのは本当ですか?
- 市町村から勧告を受けた場合に上がります。2023年12月に施行された改正で、特定空家等だけでなく管理不全空家等への勧告でも、固定資産税の住宅用地特例が解除されるようになりました。一般的な住宅では土地の固定資産税が3倍から4倍に増えるとされています。
まとめ
- 豪雪地帯は国土の半分、人口は7分の1。土地が余っている地域です
- 住んでいなくても、雪下ろし・見回り・税・保険は毎年出ていきます
- 雪で倒壊して被害が出た場合、所有者が責任を負います(民法717条)
- 管理不全空家等への勧告で、住宅用地特例が外れます(2023年12月施行の改正)
- 国庫帰属は建物があると却下。境界未確定や担保権付きも却下です
- 解体費には輸送費と工期の制約が乗ります。相場は示せません
- 解体の見積りを取る前に、建物付きの価格を先に確かめてください
遠方からのご相談が大半です。納税通知書と、建物の写真があればご連絡ください。現地に行かないまま進められます。
