この記事でわかること
- 買主が気にしているのは水質ではなく、引込にいくらかかるかだということ
- 上水道と下水道の引込ができるかを、自治体のどこで確認するか
- 下水道が通っている区域では、汲み取り式のままにしておけないこと
- 井戸水の水質検査をどう扱い、何を伝えるべきか
水は井戸から引いている。トイレは汲み取り式で、月に一度バキュームカーが来る。住んでいた人にとっては当たり前の暮らしでも、売ろうとしたときに初めて問題として立ち上がってきます。
「井戸水の家は売れないのではないか」というご相談をよくいただきますが、論点はそこではありません。
先に結論
井戸水でも汲み取り式でも、売れます。買主が見ているのは水の良し悪しではなく、上水道と下水道を引き込むのにいくらかかるか、そもそも引き込めるのかです。そして引込費用は自治体と距離でまったく違うため、全国一律の相場というものがありません。だから最初にやることは、お住まいの自治体で2つのことを確認することです。
人口に対する割合。合計すると93.7%で、残りが未処理です。
出典:国土交通省ほか「令和6年度末の汚水処理人口普及率」(令和7年8月22日公表)より作成。コミュニティ・プラント0.1%は図から省いています。報道発表資料(国土交通省)
全国で6%強の人口が、まだ汚水処理の施設につながっていません。珍しいことではありませんが、多数派でもありません。買主が「見たことのない設備」として慎重になるのは、この割合の差から来ています。
まず確認する2つのこと
順番があります。先にこちらを確認しないと、価格の話ができません。
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前面道路に、水道の配水管が来ているか
確認先は水道局(市町村の水道課・上下水道局)です。配水管の位置を示した図を見せてもらえます。来ていれば引込工事だけで済みます。来ていなければ、本管を延長できるかという話になり、費用の桁が変わります。
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その土地が下水道の処理区域に入っているか
確認先は下水道課です。処理区域図と、供用開始の年月を教えてもらえます。処理区域なら下水道に接続する話になり、区域外なら浄化槽を置く話になります。
どちらも電話で聞けますし、窓口で図を見せてもらえます。所有者でなくても、地番が分かれば答えてもらえることがほとんどです。この2つが分かるだけで、話がまったく進みやすくなります。
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下水道が通っている区域では、汲み取り式のままにしておけません
ここは法律で決まっている部分なので、知っておいてください。
処理区域内において汲み取り便所が設けられている建築物を所有する者は、その処理区域について公共下水道の供用が開始された日から3年以内に、その便所を水洗便所に改造しなければならない。
つまり、すでに下水道が通っている区域で汲み取り式のままになっている家は、本来やるべき工事が済んでいない状態です。この義務は建築物の所有者に付いてくるので、買った人が引き継ぎます。
買主からすれば、買った直後に水洗化工事をしなければならないということです。これは「やってもいい工事」ではなく「やらなければならない工事」なので、価格の話にそのまま反映されます。逆に処理区域外であれば、法律上の期限はありません。浄化槽を置くかどうかは買主の判断になります。
なお、単独処理浄化槽(し尿だけを処理するもの)は2001年4月から新設できなくなっています。すでにある単独処理浄化槽をそのまま使い続けることは認められていますが、新しく置くなら合併処理浄化槽です。
井戸水の水質検査をどう扱うか
飲用に使っている井戸については、自治体ごとに「飲用井戸等衛生対策要領」が定められていて、定期的な水質検査を求めています。多くの自治体で年1回以上とされていますが、専ら自分の居住用に使っている井戸は定期検査の対象から外している自治体もあります。扱いが分かれるところなので、お住まいの自治体の保健所でご確認ください。
検査項目は、一般細菌、大腸菌、硝酸態窒素、塩化物イオン、pH、味、臭気、色度、濁度などで、十数項目が基本です。近年はPFOS・PFOAを項目に加えている自治体もあります。保健所または登録検査機関に依頼すると、数千円から数万円の範囲で受けられることが一般的です。
検査をしていない井戸水を「飲める水です」と伝えないでください
「ずっとこの水を飲んできたから大丈夫」というお話をよく聞きます。お気持ちは分かりますが、売買では、検査の裏付けのない説明をしてはいけません。
飲用に適すると伝えて売り、後から基準を超える値が出た場合、契約不適合責任(民法562条以下)を問われるおそれがあります。正しい伝え方は「検査をしていないので飲用に適するかは分かりません」です。分からないことを分からないと言うほうが、はるかに安全です。検査結果があるなら、その書面をそのまま渡してください。
工事をしてから売るか、現状のまま売るか。判断するには先に金額が必要です。
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工事をしてから売るか、現状のまま売るか
A引込工事をしてから売る
- 水道局・下水道課で可否を確認
- 見積りを取る本管延長が必要なら金額が読めません
- 工事費用は全額先に出ていきます
- 上下水道が整った状態で売る買主の層は広がります
B現状のまま売る
- 外観と書類で査定
- 引込費用を見込んだ前提で価格をお出しします
- 工事は当社が引き受けます
- 価格はその分を見込んだ金額になります
Aが有利になるのは、前面道路まで配水管が来ていて、引込工事の金額がはっきり読める場合です。この条件なら、工事費を払っても上乗せ分で戻ってくることがあります。
本管の延長が必要な場合は話が変わります。金額が読めない工事を先に抱えることになるので、Bを選ばれる方が多いです。Bの価格は工事費を見込んだぶん下がりますが、読めない出費を引き受けるのは当社の側になります。
ご相談の前に用意しておくと早いもの
- 固定資産税の納税通知書、または登記事項証明書地番が分かれば足ります
- 水道局で確認した、前面道路の配水管の有無電話で聞けます。分からなければ当社で確認します
- 下水道課で確認した、処理区域かどうか同じく、分からなければ構いません
- 井戸の水質検査の結果があれば、その書面古いものでも構いません
- 浄化槽がある場合は、保守点検・清掃の記録法定検査の結果があれば一緒に
- 汲み取りの業者名と、だいたいの頻度
当社が現地で確認していること
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井戸の位置と形式
掘り抜きか打ち込みか、ポンプの種類と設置時期。使っていない井戸があるかどうかも見ます。
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前面道路の状況
道路の幅と、配水管・下水道管の埋設の痕跡。掘削の許可が要る道路かどうかで工事の条件が変わります。
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汲み取り槽の位置と、バキュームカーが入れるか
現状の汲み取りが続けられる状態かどうかの確認です。買主が住み始めてすぐ必要になります。
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浄化槽を置ける敷地の余地
処理区域外の場合、合併処理浄化槽を置く場所と、放流先があるかを見ます。
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建物の設備全体
給湯、台所、浴室。井戸水で使い続けてきた配管は、内部に付着があることがあります。
よくあるご質問
- 使っていない古い井戸があります。埋めたほうがいいですか?
- 埋めるかどうかは買主の使い方によって判断が変わるため、売る前に急いで埋める必要はありません。自治体によっては井戸の廃止に届出を求めている場合がありますので、埋める前に水道課または環境課にご確認ください。当社の査定では、使っていない井戸があること自体はマイナスとして扱っていません。
まとめ
- 井戸水でも汲み取り式でも売れます。論点は引込費用です
- 先に水道局(配水管の有無)と下水道課(処理区域か)の2つを確認してください
- 引込費用に全国一律の相場はありません。自治体と距離で変わります
- 処理区域では、供用開始から3年以内の水洗化が所有者の義務です(下水道法11条の3)
- 単独処理浄化槽は2001年4月から新設できません
- 検査をしていない井戸水を「飲める」と伝えないでください
- 配水管が前面道路まで来ているなら、工事をしてから売る選択も成り立ちます
自治体への確認からお手伝いできます。地番の分かるものをお手元にご用意のうえ、ご連絡ください。
