この記事でわかること
- 警戒区域(イエロー)と特別警戒区域(レッド)で、何が変わるのか
- 売買の重要事項説明でどう扱われるか
- レッドゾーンの建築制限が、価格に効いてくる仕組み
- 自分の土地がどちらなのか、自分で調べる手順
役所から封書が届いて、土地が土砂災害警戒区域に指定されたと書かれていた。あるいは、売ろうとして不動産会社に相談したら「ここはレッドゾーンですね」と言われた。そこから話が止まってしまう、というご相談です。
イエローとレッドは、名前が似ているだけで中身がまったく違います。まずそこを分けて考えてください。
先に結論
警戒区域(イエロー)には、建築や開発の制限はありません。危険を知らせて、避難の体制を整えるための区域です。価格への影響は限られます。
一方特別警戒区域(レッド)には、建築物の構造規制と開発行為の許可制があります。建てられないわけではありませんが、建てるための条件が付きます。これが価格に効いてきます。まず自分の土地がどちらなのかを確かめるところから始めてください。
イエローとレッドの違い
どちらも土砂災害防止法(土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律)に基づいて、都道府県知事が指定します。
| 警戒区域(イエロー) | 特別警戒区域(レッド) | |
|---|---|---|
| どういう場所か | 土砂災害のおそれがあると認められる区域 | 警戒区域のうち、土石等の力が建築物に重大な損壊を生じさせる程度と認められる区域 |
| 建築物の制限 | なし | 居室を有する建築物は構造の規制を受け、建築確認の対象になる |
| 開発行為の制限 | なし | 住宅分譲や社会福祉施設・学校・医療施設を目的とする特定開発行為は、知事の許可が必要 |
| その他 | 危険の周知、警戒避難体制の整備、要配慮者利用施設の避難確保計画 | 知事による移転等の勧告。移転者への資金融資などの支援措置 |
| 重要事項説明 | 区域内であることの説明が必要 | 区域内であることと、制限の概要の説明が必要 |
← 横にスクロールできます
整理すると、イエローは「知らせる」ための区域、レッドは「規制する」ための区域です。この性質の差が、そのまま売買での扱いの差になります。
全国の指定箇所数。令和7年3月31日時点。
出典:国土交通省「都道府県別土砂災害警戒区域等指定箇所数」(令和7年3月31日時点)より作成。資料(国土交通省)
警戒区域に指定された箇所のうち、約86%が特別警戒区域にもなっています。レッドゾーンは例外的な指定ではありません。「イエローだと思っていたらレッドだった」ということが、実際によく起きます。だから思い込みで判断せず、必ず調べてください。
自分で調べる手順
-
ハザードマップポータルサイトで、おおよその位置を見る
国土交通省の「重ねるハザードマップ」で、住所から土砂災害警戒区域と特別警戒区域を重ねて表示できます。色分けされているので、イエローかレッドかの当たりが付きます。ハザードマップポータルサイト(国土交通省)
-
都道府県の砂防担当課で、区域図を確認する
指定をしているのは都道府県なので、正式な区域図はそこにあります。多くの都道府県がウェブで公開しており、窓口でも閲覧できます。区域の線が土地のどこを通っているかは、ここで確認してください。
-
敷地の一部だけが掛かっていないかを見る
土地の全部ではなく、斜面に近い一部だけがレッドに入っていることがあります。この場合、建てられる場所が残っていれば話はかなり変わります。価格の差が一番大きく出るのがここです。
-
市町村で、移転等の勧告が出ていないか確認する
知事が移転等の勧告を出している場合は、それも重要事項になります。
あわせて読みたい隣地が立会いを拒否して境界が決められない土地擁壁と境界は、どちらも測量の話につながります。
なぜレッドゾーンだと価格が下がるのか
「危険だから下がる」という説明は、半分しか当たっていません。実際に効いているのは、もっと具体的なことです。
- 建てるための建築コストが上がる居室を有する建築物は、土石等の力に耐える構造が求められます。擁壁や待受け壁が必要になることもあります
- 買える人が減る住宅ローンの扱いは金融機関によって異なります。慎重になる先があるのは事実です
- 分譲という出口が使えない住宅分譲を目的とする特定開発行為は知事の許可が必要で、許可を受けるまで宅地の広告や売買契約ができません
- 火災保険・地震保険の条件が変わることがある水災の補償の扱いは保険会社ごとに違います
- 買主が「将来また指定が強まるのではないか」と考えるこれは制度の話ではなく、気持ちの問題です。ただ価格には出ます
このうち、最も大きく効くのは建築コストと分譲の可否です。土地を仕入れて建物を建てて売る事業者から見ると、建築費が上がって出口が狭くなるぶん、仕入値を下げるしかありません。価格が下がる仕組みは、感情ではなく計算から来ています。
区域に入っていることを、伝えないまま売らないでください
区域の指定は、宅地建物取引業法35条の重要事項説明の対象です(同法施行規則16条の4の3)。仲介に入る業者が説明することになりますが、売主が知っていることを伝えなかった場合、後から契約不適合責任や損害賠償を問われるおそれがあります。
「指定されたという通知が届いた」「市から説明会の案内が来た」といった事実があれば、そのまま仲介業者に伝えてください。隠して売っても、ハザードマップで誰でも調べられます。伝えて価格に反映させるほうが、後の争いを避けられます。
なお2020年8月から、水害ハザードマップにおける対象物件の位置についても重要事項説明が義務づけられています。土砂と水害は別の制度ですが、どちらも「調べれば分かること」として扱われるようになったという点で同じ流れにあります。
イエローかレッドか、敷地のどこまで掛かっているか。調べたうえで価格帯をお出しします。
あわせて読みたい近隣トラブルを理由に家を売るときの告知義務知っている事実を伝えないまま売った場合に何が起きるかは、こちらに。
仲介で売る場合と、買取の違い
A仲介で売る
- 区域の調査と重要事項説明の準備
- 買主を探すレッドゾーンだと期間が読めません
- 買主が住宅ローンを使うなら、金融機関の判断待ちここで止まることがあります
- 成約価格は高くなる可能性があります
B当社が買い取る
- 区域と敷地の掛かり方を確認
- 建築の条件を見て価格をお出しします
- 当社が買主なので、ローンの審査待ちがありません
- 価格は仲介より下がります期間の確かさと引き換えです
どちらが良いかは、急いでいるかどうかで決まります。期間に余裕があるならAを試す価値があります。固定資産税を払い続けたくない、相続の分割を早く終わらせたいという事情があるならBです。
ご相談の前に用意しておくと早いもの
- 固定資産税の納税通知書、または登記事項証明書
- 区域指定の通知が届いているなら、その書面指定の告示番号が分かると確認が早くなります
- 擁壁がある場合は、設置した時期が分かるもの検査済証があれば一緒に
- すでに他社で査定を受けているなら、その内容イエローとレッドを取り違えた査定も見かけます
当社が現地で確認していること
-
区域の線が、敷地のどこを通っているか
全部が掛かっているのか、斜面側の一部だけなのか。建てられる場所が残っているかを見ます。
-
既存の擁壁と、その状態
高さ、構造、水抜き穴の有無、傾きやひび。対策工事が済んでいるかどうかで条件が変わります。
-
斜面の向きと、上下の土地の状況
上に家があるのか、下に道路があるのか。同じレッドでも位置関係で意味が変わります。
-
前面道路と、重機が入るか
対策工事や解体をする場合の条件です。
-
周辺で対策工事が進んでいないか
砂防堰堤や急傾斜地崩壊対策の工事が計画・施工されていると、将来の条件が変わることがあります。市町村や都道府県で確認します。
よくあるご質問
- 指定されたせいで価格が下がったぶん、補償はありませんか?
- 区域指定そのものに対する補償の制度はありません。ただし特別警戒区域については、知事が移転等の勧告を行った場合、移転のための資金融資などの支援措置が用意されています。内容は都道府県ごとに異なるため、砂防担当課でご確認ください。
まとめ
- イエローは知らせるための区域。建築や開発の制限はありません
- レッドは規制するための区域。建築物の構造規制と開発許可制があります
- 全国では警戒区域の約86%が特別警戒区域にもなっています。レッドは例外ではありません
- 敷地の全部か一部かで、価格の差が最も大きく出ます
- 価格が下がる理由は建築コストと分譲という出口の狭さです
- 区域内であることは重要事項説明の対象。隠して売らないでください
- 調べる順番は、ハザードマップポータル → 都道府県の区域図です
イエローとレッドを取り違えたまま相談が進んでいることが、よくあります。まず区域の確認からご一緒させてください。
