この記事でわかること
- 火災のあった家は、性質の違う2つの問題を同時に抱えていること
- 人が亡くなった場合の告知が、売買では「何年経てば不要」にならない理由
- 焼けた建物を解体してから売るべきか、そのまま売るべきか
- 受け取った火災保険金と、売却との関係
火災のあった家をどうするか。ご本人やご家族にとって、気持ちの整理がつかないうちに判断を迫られる話です。この記事は、手続きとして何を考えればよいかだけを書いています。
先に結論
火災のあった家は売れます。ただし、建物の損傷と人が亡くなったかどうかは、まったく別の問題として扱われます。前者は修復と解体の費用の話、後者は買主に伝える義務の話です。そして人が亡くなった場合、売買では「何年経てば言わなくてよい」という期間の目安がありません。
火災のあった家は、2つの別々の問題を抱えている
ここを分けて考えないと、話がかみ合わなくなります。
① 建物の損傷としての扱い
価格に効くのは、焼けた範囲よりも構造にどこまで影響しているかです。
| 焼損の程度 | 何が論点になるか | 売り方 |
|---|---|---|
| 部分的な焼損 | 修復済みか、履歴をどう伝えるか | 修復して売る/そのまま売る |
| 半焼 | 柱や梁への熱の影響、修復費と解体費の比較 | どちらが安いかで判断 |
| 全焼 | 解体費と、更地にしたときの固定資産税 | 解体して土地として/そのまま |
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解体してから売るべきか
よくいただく質問ですが、解体する前にご相談ください。理由は2つあります。
- 建物を壊すと、土地の固定資産税の軽減が外れることがあります住宅用地の特例。翌年の1月1日時点で建物が無いと適用されません
- 焼けた建物の解体は、通常の解体より費用が上がることがあります分別が難しく、消火で濡れた廃材が重くなるためです
解体費を売主が負担してから売るのと、そのままの状態で売って価格に反映させるのとで、手元に残る金額が逆転することがあります。先に見積りだけ取っておくのは構いませんが、着工の前に一度ご相談ください。
あわせて読みたい異臭がする物件の売却と告知義務どこまで伝えるかという判断の基準は、においの場合も同じです。
② 人が亡くなった場合の告知
国土交通省が、宅地建物取引業者向けに考え方を示しています。
自然死や日常生活の中での不慮の死については、原則として告げる必要はない。ただし、特殊清掃等が行われた場合は、この限りではない。他殺、自死、特殊清掃等が行われた事案については、賃貸借では概ね3年が経過した後は原則として告げなくてよいとされている。
ここで多くの方が誤解されるのが、「3年」という数字です。
「3年経てば言わなくてよい」は、賃貸の話です
ガイドラインが概ね3年という目安を示しているのは賃貸借についてです。売買には、この期間の目安がありません。年数が経ったことだけを理由に「もう伝えなくてよい」と判断するのは危険です。
知っていて伝えなかった事実については、契約不適合責任を負わないという特約があっても効きません(民法572条)。
また、ガイドラインはあくまで宅地建物取引業者向けの指針であって、法律そのものではありません。これに沿っていれば必ず責任を免れる、というものでもありません。
伝えるべき内容
- いつ起きたか年月まで
- どこで起きたか建物内か、敷地内か
- どういう事案だったか
- 特殊清掃が行われたかどうか
なお、亡くなった方の氏名や、ご遺族の事情まで伝える必要はありません。買主が判断するために必要な範囲にとどめてください。
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受け取った火災保険金はどうなるのか
火災保険金は、契約に基づいて被保険者が受け取るものです。保険金を受け取ったうえで、修復せずにそのまま売ることもできます。
価格には反映されます
保険金を受け取って修復していない場合、買主から見れば「焼損したまま」の建物です。買取価格は、修復されていない状態を前提にした金額になります。保険金と売却代金の合計で見るのが実際的な考え方です。
- 罹災証明書を取っておいてください市区町村で発行。焼損の程度の客観的な記録になります
- 保険会社の損害調査の資料があれば、それも残してください
- 税金の扱いは事案によって変わります保険金と譲渡所得の関係は、税理士にご確認ください
解体費を負担してから売るのと、そのまま売るのと、手元に残る金額が逆転することがあります。
ご相談の前に用意しておくと早いもの
- 登記事項証明書
- 罹災証明書無ければ、これから取っていただく形で構いません
- 火災が起きた時期と、焼損した範囲が分かるもの写真があれば十分です
- 保険金を受け取っているかどうか
- 消防や警察に提出した書類があれば、その控え
当社が現地で確認していること
-
焼損の範囲と、構造への影響
柱と梁がどこまで熱を受けたか。表面の炭化だけか、断面まで及んでいるか。ここで修復か解体かが分かれます。
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消火による水損
火が回っていない部分でも、消火活動で床下や壁の中が傷んでいることがあります。
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隣家への延焼と、その後の関係
延焼があった場合、近隣との間で話がついているかを確認します。未解決だと売却後に引き継がれます。
-
解体の条件
前面道路の幅、重機が入るか、隣家との距離。焼けた建物は養生に手間がかかるため、条件で費用が変わります。
-
再建築の可否
接道と用途地域を確認します。更地にしたあと建てられない土地だと、話の前提が変わります。
よくあるご質問
- 亡くなった方の名前まで伝える必要がありますか?
- 必要ありません。伝えるのは、いつ、どこで、どういう事案だったか、特殊清掃が行われたかどうかの範囲です。買主が判断するために必要な範囲にとどめてください。
まとめ
- 火災のあった家は、建物の損傷と人の死という別々の問題を抱えています
- 価格に効くのは焼けた範囲より、構造にどこまで影響しているかです
- 「3年経てば言わなくてよい」は賃貸の話で、売買には期間の目安がありません
- 知っていて伝えなかった事実には、免責特約が効きません
- 解体する前にご相談ください。手元に残る金額が逆転することがあります
急いで決める必要はありません。罹災証明書と登記事項証明書だけお手元にご用意のうえ、ご都合のよいときにご相談ください。
