告知・事情

異臭がする物件の売却と告知義務

約8分

株式会社W VISION 宅地建物取引業免許 東京都知事(1)第109264号

この記事でわかること

  • においの原因が敷地の中か外かで、やることが変わること
  • どこまで買主に伝える必要があるのか
  • 消臭して売ることが、なぜ危ないのか
  • 原因が自分で直せないときの、記録の取り方と売り方

家に入ると、どこからか嫌なにおいがする。原因が分からない。あるいは分かっていても、原因が近所にあって自分では手が出せない。

においは、写真に写りません。だから買主に説明するのが難しく、同時に説明しないまま売ると後からもめやすいという、やりにくい性質を持っています。

先に結論

やることは2つです。原因を切り分けることと、においが出る条件を記録すること。

そして最も大事なことを先に書きます。消臭して隠す方向で考えないでください。原因を直すのは良いことですが、原因を残したままにおいだけ消して売ると、法律上の責任を問われます。においは季節と天候で戻ります。買主が住み始めてから戻ります。

苦情の原因は、思っているところにない

悪臭の苦情は、何が原因だったか

全国の悪臭苦情11,735件の発生源別の割合。令和5年度。

野外焼却22.2%
サービス業・その他16.3%
個人住宅・アパート・寮13.5%
その他の発生源48.0%

出典:環境省「令和5年度悪臭防止法施行状況調査」(令和7年2月21日公表)より作成。「その他の発生源」は上位3項目以外の合計です。報道発表資料(環境省)

苦情の原因として一番多いのは、工場ではなく野外焼却です。次がサービス業、そして個人住宅・アパート・寮が13.5%を占めます。

ここに大事な含みがあります。悪臭防止法が規制しているのは、規制地域内の工場や事業場から出るにおいです。一般の個人住宅や、野外で物を燃やす行為は、この法律の規制対象ではありません。つまり苦情の多い原因の多くは、悪臭防止法では止められないということです。「役所に言えば止めてもらえる」と考えていると、期待が外れます。

原因を切り分ける

家の中で嫌なにおいがする窓を全部閉めてもにおいますか?においが残る窓を閉めると弱まる原因は敷地の中直せる可能性が高い直してから売る道があります原因は敷地の外自分では直せません記録して開示する道へ
単純ですが、これで半分は分かれます。閉め切って1〜2時間置いてから確かめてください。においに慣れてしまうので、外から戻ってすぐに判断するのがコツです。

そのうえで、原因ごとに確認先が違います。

どんなにおいか 疑われる原因 確認する先
下水のようなにおい 排水トラップの水が蒸発している。長く空き家だった家でよく起きます。配管の破損や浄化槽の不具合も まず全部の排水口に水を流す。改善しなければ水道工事店、浄化槽があれば保守点検業者
かび臭い・土のようなにおい 床下の湿気、漏水、雨漏り、断熱材の濡れ 床下・天井裏の点検。建築業者やホームインスペクション
獣のようなにおい 小動物の侵入・死骸、鳥の巣、ペットの残り香 天井裏・床下の点検。市町村の環境担当課
焦げたにおい・煙 近隣での野外焼却 市町村の環境担当課、消防。廃棄物の焼却は原則禁止されています
油・食べ物のにおい 近隣の飲食店の排気 市町村の環境担当課。規制地域内の事業場なら悪臭防止法の対象になりえます
家畜・堆肥のにおい 畜舎、堆肥場 市町村の環境担当課・農政担当課
薬品のようなにおい 近隣の工場・事業場 市町村の環境担当課、都道府県の環境部門

← 横にスクロールできます

最初にやってみてほしいのは、すべての排水口に水を流すことです。長く使われていなかった家では、これだけで解決することが本当に多いです。トラップの水が蒸発して、下水の空気が室内に上がってきているだけ、という状態です。費用はかかりません。

においが出る条件を記録する

原因が敷地の外にある場合、直すことはできません。できるのは正確に伝えることです。そのために記録を取ってください。

  • 日付と時刻朝だけ、夕方だけという偏りが出ることがあります
  • 天候と風向き風向きで決まる場合、原因の方向が特定できます
  • 強さを自分の基準で3段階ほどに「気になる/窓を閉める/外に出たくない」程度の区切りで十分です
  • どこでにおうか庭だけ、2階だけ、換気扇を回したときだけ
  • 市町村に相談したなら、その日付と担当課相談した記録そのものが、誠実に対応した証拠になります

1か月ほど付けておくと、傾向が見えます。そしてこの記録は、買主に渡す資料としてそのまま使えます。「たまににおいます」と口で言うより、記録を見せたほうが信用されます。価格の交渉でも、根拠のある話ができます。

あわせて読みたい近隣トラブルを理由に家を売るときの告知義務近隣トラブルの場合の線引きも、同じ考え方で整理しています。

どこまで伝える必要があるのか

先にお伝えしておきます。においについて、国が出したガイドラインはありません。人の死の告知については国土交通省のガイドラインがありますが、においはその対象ではありません。ですから「3年経てば言わなくていい」というような目安も存在しません。

根拠になるのは、次の2つです。

宅地建物取引業法 47条1項、民法 562条以下

宅地建物取引業者は、取引の相手方の判断に重要な影響を及ぼす事項について、故意に事実を告げず、または不実のことを告げる行為をしてはならない。また引き渡された目的物が契約の内容に適合しないものであるとき、買主は修補・代金減額・損害賠償・契約の解除を求めることができる。

つまり判断の基準は「買主が知っていたら、買うかどうか・いくらで買うかの判断が変わっていたか」です。この一点で考えてください。

×

伝える必要が高い

  • 生活に支障が出る強さのにおいが続いている
  • 原因が敷地外にあり、解消の見込みがない
  • 市町村に相談や苦情を出したことがある
  • 過去に同じ理由で売買が止まったことがある
  • 近隣住民の間でも問題になっている
△

判断が割れる

  • 季節や風向きによって、ときどきにおう
  • 原因は分からないが、においは残っている
  • 以前あったが、原因を直して今はにおわない
○

対象になりにくい

  • 排水トラップの乾燥で、水を流せば消えた
  • 長期不在による室内のこもり
  • 前の住人の生活臭で、清掃で解消した

△の段をどうするかで悩まれると思います。当社の考えは「迷ったら伝える」です。伝えて価格に反映させれば、そこで終わります。伝えずに売れば、買主が住み始めてにおいに気づいた時点から始まります。後の方がはるかに重くなります。

原因を残したまま、においだけ消して売らないでください

内覧の前に強い芳香剤を置く。オゾン脱臭をかける。窓を開けて空気を入れ替えてから案内する。原因を直さずにこれをやると、事実を隠す行為になります。

宅地建物取引業法47条1項は、判断に重要な影響を及ぼす事項について故意に事実を告げない行為を禁じています。また原因が残っていればにおいは戻るので、契約不適合責任を問われ、代金の減額や契約の解除、損害賠償を求められるおそれがあります。

原因を直すのは、まったく別の話です。直すのは良い、隠すのは駄目。この線だけ守ってください。直した場合は、何をいつ直したかを書面で残して買主に渡せば、それが一番強い説明になります。

原因が分からない段階でも、価格帯はお出しできます

においの事情を前提に入れた金額です。隠す必要がないので、話がこじれません。

無料で診断する

あわせて読みたい火災のあった家は売れるのか伝える範囲の考え方は、火災のあった家でも共通です。

直してから売るか、開示して売るか

A原因を直してから売る

  1. 排水に水を流す、床下を点検するここまでは費用がほぼかかりません
  2. 原因が特定できたら修繕配管、漏水、断熱材など
  3. 何をいつ直したかを書面に残す
  4. その書面を添えて売る価格は下がらず、買主も安心します

B開示して現状のまま売る

  1. においの記録を1か月ほど付ける
  2. 記録をそのまま開示する
  3. においを前提にした価格で売る価格は下がります
  4. 後からもめる余地がなくなります

原因が敷地の中にあるなら、Aを強くお勧めします。排水トラップや床下の湿気といった原因は、費用をかけずに、あるいは少ない費用で直せることが多いからです。直せるものを直さずに値下げするのは、損です。

原因が敷地の外にあるなら、Aは選べません。この場合はBになります。Bの価格は下がりますが、開示したうえでの価格なので、後から戻ってくる話がありません。相続で受け取った家を早く整理したい、という事情のときはこちらを選ばれる方が多いです。

ご相談の前に用意しておくと早いもの

  • 固定資産税の納税通知書、または登記事項証明書
  • においの記録数日分でも構いません。無くても大丈夫です
  • 市町村に相談したことがあれば、担当課と日付
  • 浄化槽がある場合は、保守点検・清掃の記録
  • 修繕したことがあれば、その見積書や領収書何を直したかが分かると、査定が正確になります
  • 近隣に事業場や畜舎がある場合は、その位置が分かるもの地図に印を付ける程度で十分です

当社が現地で確認していること

  1. 排水口とトラップの状態

    台所、浴室、洗面、洗濯機、屋外の排水口。水が入っているか、封水が切れていないかを一つずつ見ます。ここで解決することが一番多いです。

  2. 床下と天井裏

    湿気、漏水の痕、小動物の侵入跡。点検口から入れる範囲で確認します。

  3. 浄化槽・汲み取り槽の位置と状態

    建物との距離、通気管の位置、点検が続いているか。

  4. 近隣の状況と風向き

    事業場、畜舎、ごみ集積所、下水のマンホール。地形と風の通り方を見ます。においが来る方向に何があるかを確かめます。

  5. 時間帯を変えた確認

    原因が外にある場合、1回の訪問では分からないことがあります。必要なら日時を変えてもう一度伺います。

最後の点は、当社がにおいの案件で必ずやっていることです。1回で判断すると、売主にも買主にも不公平になります。

よくあるご質問

においが季節によって出たり出なかったりします。どう伝えればいいですか?
記録を取って、そのまま渡すのが一番確実です。日付、時刻、天候、風向き、強さ、どこでにおうかを1か月ほど付けてください。「たまににおう」と口で言うより、記録を見せたほうが買主に正確に伝わり、価格の話も根拠のあるものになります。

まとめ

  • 窓を閉め切って確かめれば、原因が敷地の中か外かが半分は分かります
  • まず全部の排水口に水を流してください。これで解決することが多いです
  • においについての国のガイドラインはありません。「何年経てば」という目安もありません
  • 基準は、買主の判断が変わっていたかどうかの一点です
  • 原因を残したまま、においだけ消して売らないでください
  • 原因が敷地内なら直す。費用をかけずに直せるものが多いです
  • 原因が敷地外なら、記録を取って開示する。後からもめる余地がなくなります

「原因が分からないまま、どう売ればいいか分からない」という段階でのご相談が多いです。排水口に水を流してみたうえで、ご連絡ください。

まだ診断していない方へ

60秒で、価格帯がわかります。

6つの質問に答えるだけ。連絡先をうかがう前に、価格帯をお見せします。

診断をはじめる

詳しい金額をご希望の方だけ、診断のあとにご連絡先をご入力ください。